2007年12月19日

戦い、傷、テスト。

 体が重たい。微妙に熱を持っているみたいだ。
 傷ついた組織が周りをぎゅうと引き寄せて、体中引き攣れている。

 それが集中できない言い訳。

 人口島での戦いは、早々に怪我で戦線離脱になってしまった。
 次行けば、この命は――俺は、無くなるかもしれない。
 色々なことがそれを良しとしなかった。
 俺自身の意思であり、俺が在ることを日常にしてくれている人たちの心でもある。
 隣で戦う約束。そして立ち続ける決意。それらが全て薙ぎ倒さざるを得なかった。
 戦いの集結までは歯がゆかった。…悔しかった。
 でも祈ることができるだけでも、それは意味を持っていたのだろう。
 同じように怪我を負ってしまった人も居る。でも、みんな居る。
 無事作戦を終えて、ほっと息をついた。

 鎌倉に戻ってからは、そんな安堵と疲労を捨てて来いと言わんばかりにテストが待ち受けていた。
 だから体の状況を言い訳に、少しぼんやりと過ごしている。

 夜も更けた時間になっているのに、一応広げた教科書とノートに並んだ文字はさっぱり頭に入ってこない。
 今度こそ理解しようと、苦手教科に取り掛かったのは人として至極自然で、それでも苦手は苦手に変わりないのだから、しょうがない。
 仕組みがよくわからないものだけど、一歩一歩ゆっくりクリアしていけば出来ないことはないのだろう。
 テスト期間という区切りが焦りに繋がって、そんな意識ということも手伝って入ってこない。
 だから、しょうがない。

 勉強するからと、形だけは殊勝に音は切っていた携帯が光った。メール。
 すぐさま手にとってデジタルに変換された言葉を読んだのは、ほぼ逃避と同義なのだろう。
 重傷を心配する言葉と、…慌ててるだろう様子に少し笑ってしまった。
 仲良しの同級生と俺は、苦手なものと得意なものがほぼ間逆。
 前回のテストの際に教えあいしようと話してたことを思い出して、もう一度目の前の教科書を一瞥した。

 右手で愛用のシャープペンをくるくる回しながら、左の親指で携帯のボタンを押していく。
 かすかなぷち、ぷちという音。今の携帯にしたのはこの音の耳障りも理由だ。
 打ち終えたメールを、頭から読み返した。


『心配サンキュ。安静にしてる。
 英語任せろっ。
 …代わりと言っちゃなんだけど、古文教えてくれ…。
 化学もつけるから頼む。(笑)』


 その時まで、古文は封印しよう。
 ろくでもない決意と共にメールを送信したら、横でヒアリングの勉強してた人が小さなうめき声と共に机に突っ伏した。
 その様子に笑いながら古文の勉強道具を片付けて、とりあえず冷えたお茶を入れ替えることにした。
 …学年一緒だったら、教えてられたんだろうけどな。
 1学年とはいえ、そんなところはところばかりは如何ともし難かった。
posted by 久我 at 13:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 物語
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